ご鑑賞の手引き(洋遊会射水神社公演)

舞楽 納曾利(なそり)


 右方(宮中の2つの楽所のうち右方の楽所のレパートリー)2人の舞。奈良時代に高句麗(こうくり)の国から伝わった。雌雄2匹の龍が天上で舞い遊んでいるさまと言われる。納曾利という名前は意味が分からないが古代朝鮮語と思われる。平安時代に大変親しまれ、源氏物語、枕草子、蜻蛉(かげろう)日記などにも登場する。色鮮やかな面、装束、舞人の左右対称の動きが見所。

楽器紹介


 雅楽に使う楽器を紹介する。雅楽はたくさんの国の音楽からできたものなので、楽器編成も何種類かあるが、そのうち唐楽という、中国渡来の音楽の楽器編成を紹介する。

3つの管楽器 龍笛(りゅうてき)、笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、
2つの絃楽器 琵琶(びわ)、筝(そう)、
3つの打楽器 鉦鼓(しょうこ)、太鼓(たいこ)、鞨鼓(かっこ)から成る。

管絃と朗詠


 舞を伴わない雅楽を管絃と言う。絃楽器が加わることが特徴。平安時代、管絃や歌曲は貴族の日常生活の楽しみとして、親しい仲間で演奏された。

(1)平調音取(ひょうじょうのねとり)


 正式な曲ではなく音合わせ。雅楽ではいろいろな調子(西洋音楽のハ長調、ニ短調のようなもの)ごとに、音合わせ用の曲があり、その曲をと言う。これはそのうちの(西洋音楽のホ長調に近い)の音取で、1分ぐらいの曲。前奏曲の役割もある。

(2)越天楽残楽三返(平調)


 雅楽の中で最も有名な曲。もとは西域(シルクロードに沿った地方)の民謡だったとの説がある。今回は古くから伝わる残楽(のこりがく)と言う演奏法。演奏が進むにつれて楽器が順々に少なくなっていき、最後は篳篥(ひちりき)1本と絃楽器だけの変奏曲になる。貴族らしい余情のあるしゃれた演出。今回の篳篥は、初挑戦の大畠暁人君。

(3)朗詠「嘉辰(かしん)」(平調)


 朗詠とは、平安時代の詩吟。平安朝の貴族は祝宴や風流の遊びのたびに、さかんに漢詩や和歌を朗詠した。「嘉辰」は中でも一番の人気曲。紫式部日記には、藤原道長が孫(のちの後一条天皇)の誕生の祝宴でこの詩を何度も朗詠する場面が出てくる。

 歌詞は「嘉辰令月歓無極 万歳千秋楽未央(かしんれいげつかんむきょく ばんぜいせんしゅうらくびよう)」というもの。
 意味は「星がきれいで月が美しく、私の喜びは限りがない。千年歌っても万年歌っても、楽しみは半分も終わらない」。

舞楽 五常楽(ごしょうらく)


 左方4人の舞。蛮絵(ばんえ/盤絵)装束というきっちりした服装である。雅楽の中でも歴史のある曲。儒教の五徳、すなわち仁義礼知信を表したとか、雅楽の主要五音、宮商角徴羽(ちう)を表したものという諸説がある。古くから雅楽の入門曲に使われるが、実は格調と熟練を要する難曲。

舞楽 蘭陵王(らんりょうおう)


 左方の舞。面をつけた1人が舞う。舞の故事については2説ある。6世紀中国の将軍で蘭陵王の称号を持っていた高長恭の奮戦の場面というものと、ベトナムから伝わった古代南アジアの龍王の舞というもの。堂々とした舞いぶりと絢爛豪華な装束から、平安文学などでは一番の人気曲。今回の舞は山田啓太君。

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